兵庫県姫路市で相続のトータルサポートを行っている中井勉さん。中井さんが相談の窓口となり、行政書士および不動産業務を担当、各専門家との連携を行う傍らでは、妻の初深さんが心のケアを行っているとのこと。通所介護(デイサービス)を開設するなど終活を含めた地域貢献をされています。「相続アドバイザー養成講座」で得た知識をどう活用しているのかを伺いました。

相続の現場を知る身としては、相続に関わるすべての専門家が全体を網羅した知識を持つべきだと思います。

ナカイ相続トータルサポートセンター 代表
中井勉さん
プロフィール »

断片的な知識ではなく包括的に理解が必要

不動産の売買・賃貸の仲介ができる行政書士として20年以上の実績を積むなかで、相続に関わり、知識不足を痛感。相続アドバイザーとなり、10年以上になります。
地域の人々を対象に、相続のトータルサポートセンターとして相談窓口なっているほか、現在では通所介護、いわゆるデイサービスを開設し、老人介護・福祉にも携わっています。

相続には、司法書士、行政書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、社会保険労務士、宅地建物取引士などを横断する知識が必要です。それと同時に、相続する者やされる者の深い思いなどを知らなければ到底満足な仕事はできないと感じていました。 
また、相続財産の約4割強が不動産であることから、行政書士業務と宅地建物取引業でのビジネスチャンスの可能性を感じていて、相続アドバイザー協議会の養成講座に出会いました。
 
私が受講した2011年の第21期養成講座は全20講座2期に分けての座学(現在は全18講座、zoom受講が可能です)で、相続をあらゆる角度から細かく網羅していました。まさに目からウロコといった内容でした。
しかも講師はその道のスペシャリストばかりで、とてもフランクでわかりやすかったのが印象的でした。

養成講座を受講したことで、相談者と対面して話す際にも、どんな内容になっても構わないと思えるほどの余裕がもてるようになりました。とにかく広い範囲で学習したので、相談内容がどのジャンルになっても詰まるようなこともなくスラスラとお答えできるようになりました。
また、難しい事例に遭遇した場合には、相続アドバイザー協議会に問い合わせてヒントをもらうことができました。

相続は人の気持ちと向き合う仕事

相続はトラブルになっていないにしても、人がひとりいなくなることです。
つい先日まで存在していた人がポッカリと抜け落ちてしまう喪失感をどう埋めるか、残された財産をどう受け継いでいただくかが問題です。私は、相続というイベントを通じて、残された相続人の力になり、励ましていくことで次につながる生きがいを持っていただくことを使命だと感じています。

私が受講したときには相続アドバイザー協議会創設者の野口賢次先生が第1回目の講座を担当されていて、とても印象的な話をしてくださいました。野口先生は相続に「想い」を持ち込んだ人だと思います。
書籍『相続は譲る心と感謝の気持ち』と『心をつなぐ相続』(週刊住宅新聞社発行)は、ともに野口先生の著作です。無機質な相続に血液を注ぎ込むダイナミックな展開になっていて、読む者の心に刺さる仕上がりになっています。

相続で最も難しいのが人の気持ちと向き合うことです。相続人の人数が多いほど、どういう人がどういう立場・現状にあって相続に臨むことになるのかフタを開けるまでわからないので、伝え方は重要になります。

相続の正確な知識を持っている人が案外に少ないということもあります。
例えば、子どものいない夫婦で、配偶者が亡くなった後、残された配偶者がすべての財産を相続できると思っていたら、4分の1は亡くなった配偶者の兄弟へ行くことを知り、何か手は打てないのかと相談に来られるようなケースもあります。
法律の定めを変えることはできないので、財産を分割することになりましたが、残された現金で足りるのか、現金を払ってしまうと生活は成り立つのか、住居を売却するのかなど、簡単ではありませんでした。

相続の知識を広めていくことも必要だと感じています。

相続では気持ちの問題が噴出することも多いので、私のトータルサポートセンターでは、妻が心の部分の対応を手伝ってくれています。

相談案件はチラシ、広告、紹介から


相談案件は、定期的に撒いているチラシやWEB上の広報・広告記事と、紹介で入ってきます。
自身で講演会を開催することもあります。
そんなときに、「今はいいけど、その後要支援、要介護になったらどうなるの」と問われ、通所介護デイサービスを立ち上げました。そして、終活と言われる身の回りの整理、財産の相続を円滑に進めるための計画、葬儀や墓の準備など単に行政書士という範囲を超えた活動が必要になり、ついには「ナカイ相続トータルサポートセンター®」を立ち上げて活動しています。

認知症が増えているという実情もあります。
高齢者のこの先を考える相談には、相談者の表面的な言葉だけでなく、家族信託、成年後見人、遺言書など相談内容を大きく捉えて案内する必要があると考えています。 

相続の全体像を把握して、必要な専門家に必要なタイミングで入っていただく相続アドバイザーの立場にいると、行政書士として書類を整えるだけでなく、波及的にいろいろな仕事が発生します。

相続の現場を知る私としては、相続に関わるすべての専門家が全体を網羅した知識を持つべきだと思います。各専門家にどのタイミングでどう介入していただく必要があるのかがわかると、全体の中での自身の立ち位置も明確になります。
法律は変わっていくものなので、常に再受講もしています。
また、妻の中井初深をはじめスタッフも相続アドバイザーを受講予定です。

対応事例1:相続は人の気持ちと向き合う仕事

相続はトラブルになっていないにしても、人がひとりいなくなることです。つい先日まで存在していた人がポッカリと抜け落ちてしまう喪失感をどう埋めるか、残された財産をどう受け継ぐかが課題です。相続というイベントを通じて、残された相続人の力になり、励ましていくことで次につながる生きがいを持っていただくことを使命だと感じています。

対応事例2:通所介護デイサービスの立ち上げに至る

講演会で「今はいいけど、その後要支援、要介護になったらどうなるの」と問われ、通所介護デイサービスを立ち上げました。認知症が増えているという実情もあります。高齢者のこの先を考える相談には、相談者の表面的な言葉だけでなく、家族信託、成年後見人、遺言書など相談内容を大きく捉えて案内する必要があると考えています。

中井勉さん

ナカイ相続トータルサポートセンター 代表
行政書士ナカイ綜合事務所 所長
株式会社ナカイ綜合事務所 代表取締役
http://www.nakai358.jp/

1991年、兵庫県姫路市で行政書士事務所を開業。2004年、株式会社を併設、翌2005年に宅地建物取引業の許可を取得。不動産の売買・仲介と行政書士を掛け合わせた事業スタイルで活動。相続に関わるなかで、2011年、相続アドバイザー協議会の養成講座(21期)に参加。相続アドバイザーとして10年以上の活動実績を持つ。