所属する法律事務所の方針で、相続アドバイザー資格を取得した今井絵美さん。「誰に相談したらいいかわからない・・・」と困っている人が相談しやすい窓口になり、相続に関わる専門家とともに、充実したサービスを提供し、不安を解消する手伝いをしています。

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先生と名のつく人には質問しづらいもの。相続では大きなお金が動くので納得して進めることが大切です。

山下江法律事務所
今井絵美さん
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法律事務所の柱の一つを「相続」に。3人の事務員で相続アドバイザー資格を取得

今井さんは広島の法律事務所に所属して18年目。
過払い相談の波が終焉するのを見越した事務所が、次の柱として「相続」を選択したことから、相続アドバイザーの資格を事務員が取得することになったそう。
事務員が相続アドバイザーの資格を持ち、弁護士には対応しきれない細かなサービスを担うことで差別化を図るとしたのです。
 
10年ほど前に、広島の事務所から3人の事務員が東京に4日間×2回出張して、相続アドバイザー協議会21期の講座を受講しました。
 
現在は、相続資格を扱う団体がほかにいくつもありますが、相続の現場を知る人に学ぶことができる場で、講師陣の質と熱量が高いと感じたそう。
20講座(現在は18講座に変更中)に、専門と得意分野が異なる20人の講師陣が配置され、借金、遺産分割、贈与、不動産の売却など、さまざまな事例が語られるので、イメージが掴みやすく、相続問題を総合的に学べます。
しっかりとした理念があり、学んだことをどう使うのか、誰の役に立つのかが明確で、使命感をもって受講することができたと、今井さんは言います。
 
受講に前後して妊娠が発覚、つわりが大変ななか、講座の途中と終わりに開かれた懇親会にも参加。「好きなお酒は一滴も飲めなかった」と笑います。
 
1年半後には、3人のうち2人が上級資格も取得しました。

相続無料相談窓口を開設し、問合せの案件に電話対応

当時からHPには力を入れている弁護士事務所だったので、早速、相続アドバイザーによる無料相談窓口開設をPR。
問合せのある案件で電話対応が始まりました。
 
弁護士による法律相談となるケースでは、同席して実務知識の定着を図るとともに、事務所として資格をどう活かしていくのか、3人で話し合い、全員が受けた電話相談と、担当する弁護士の案件をシェアして経験値を上げていきました。
 
同時にコミュニティづくりにも着手。
事務所内で相談員として活動するだけでなく、弁護士以外の関係者とコミュニティをつくろうと考え、「はなまる相続実現委員会」と名付けて、月に1回のランチ会をスタートしました。士業、保険営業、銀行マンなどとのランチ会を3年にわたってのべ33回開催し、250名とつながったそうです。
 
また、HPに紐づけて、「相続アドバイザー」ブログを開設し、毎週交代で記事を上げるようにしたことで、徐々にHPからの問合せも入るように。
「初めての弁護士事務所利用は敷居が高いものですが、アドバイザーに無料で聞けるならと思っていただけるようです」と今井さん。

大切なのは導入の窓口になること。ちょっと困っている段階が大切。

相談の糸口は「遺言書を書きたい」など。
シンプルな内容であれば、司法書士でも弁護士でも、書いて終わりです。
しかし、遺言以前に対処が必要なケースもあります。

相談ケース1:複雑な不動産登記の整理から遺言まで

不動産がたくさんあり、名義が夫婦・子どもと共有されているなど複雑な状況で、相続させたい現実とは矛盾する登記になっていたケースで、遺言書、税金、不動産の評価といった角度で見る必要がありました。
 
これに対して、税理士が、生きている間に等価交換をして、贈与税がかからないように処理することを提案。年内に手続きを終えた方がよいという状況で、すでに年末に近い時期でしたが、早い段階から司法書士も参加していたので、スピーディに対処ができました。
そのうえで遺言書を残しました。

相続アドバイザーとして「一番大切なのは導入の窓口になること」と今井さんは言います。
相続案件では、「誰に相談したらいいかわからない・・・」と、ちょっと困っている段階で相談を受けることがとても大切になるそう。
法律事務所の相続アドバイザーによる無料相談は、そうした窓口として最適。
窓口となり、専門家をつないで進捗を管理し、質問に対応することで、早めに不安を解消し、よりよい相続を選択できるようにすることが仕事です。
優しそうで、しっかりした女性が相談にのってくれると伝わるように、HPには相談員の写真も掲載しています。

相談ケース2:遺産分割協議書の作成・税金対策から次の相談に

地元のカルチャースクールで相続の連続講座を開講していた時に知り合ったご夫婦。
はじめに、弁護士、税理士、司法書士のチームで、遺産分割協議書の作成、税金対策をお手伝いしました。
 
その後、奥様がリスクの高い状況になり、ご主人様から連絡。
「財産のことで、どうしても相談したいことがある」という緊急案件でした。
事情がわかっていたので、弁護士を連れて伺い、危急時遺言を作成し、ご希望に添うことができました。

初回は親世代を送る際に相談があり、2度目は自身が60代後半から70代になって相談に来られるというケースも多いそう。
今井さんの場合、当初の5年で500-600件の相談を受けたあたりまでカウントしていたそうなので、年平均100件以上に対応していると言えます。
相続セミナーの講師もしているので、携帯電話やSNSに相談を受けることも増えているそうです。
 
相続アドバイザー協議会の講座は、問題を解決できる人を育てる内容、カリキュラムになっていると、今井さん。
資格を取得したら終わりではなく、その後も継続学習ができるようになっていて、資格を上手に活用している人の活動内容をシェアできるのも相続アドバイザー協議会ならでは。自身に相続の知識があれば、専門家を見極めることもできる、と語ってくれました。
 
3年にわたったランチ会を基盤に立ち上げた一般社団法人はなまる相続で相続フォーラムを開催した際には、本部の支援も受けました。
「思いをつなぐ相続」といった大切な話ができる講師陣が参集して、来場者の満足度も高かった、実際に案件を手がけてきた先生たちの言葉は強いと感じたそうです。
 
2020年に設立したMocias(モシアス)は、終活需要に対応してエンディングノートを書き上げるサービスを提供する事業。相続案件の窓口を広げようと、終活ガイドとしても活躍しています。

今井 絵美さん

山下江法律事務所
https://www.law-yamashita.com/

相続アドバイザー(上級)/NPO法人相続アドバイザー協議会
終活ガイド(上級)/一般社団法人終活協議会
広島の大手法律事務所で17年間勤務して600組以上のご家族に相続・終活のアドバイス。120回以上の講演・セミナーに講師として登壇。一児の母。
愛媛県松山市出身
2003年 広島大学法学部卒業
2004年 山下江法律事務所に入所(18年目)代表補佐
2015年 一般社団法人はなまる相続設立
2020年 Mocias(モシアス)設立