カテゴリー : 野口レポート

ハウスメカーなどの相続セミナーが盛んです。借金すれば相続税が減ると誤解している人もいます。借金しても相続税は減りません。アパートやマンションを建てるから減るのです。
 
目的を節税にした賃貸経営は本末転倒です。目的は賃貸経営でなければなりません。結果として相続税が減る、これが正しい賃貸経営のありかたです。ここを取り違えると賃貸経営は失敗します。
 
節税対策を目的に駅から30分のところへ複数の賃貸マンションを建てたAさんが亡くなりました。多額の借金、空室増加、賃料下落、加え金利が上昇すれば債務超過になる可能性があります。
 
子は父親の相続を放棄(父親の兄弟と調整が必要)し、連帯保証人の母親が全財産を相続することを提案しました。2次相続で時代の変化や状況を見極め、子は承認か放棄かを再度選ぶことができます。債務超過なら相続を放棄し、親の借金から子の人生を守ることができます。ただし、子が連帯保証人でないことが絶対条件です。だが、子ども達は決断できず父親の財産を相続しました。
 
 ある母親から相談を受けました。息子(50代)が多重債務におちいり、金融業者の対応や息子へのお金の工面で疲れ切っています。息子さんに会いましたが働く意欲がありません。
 
親は不動産を所有しています。金融業者は本人に返済能力がないことなど承知です。相続を見込んで貸しています。相続が開始したら本人に代位し、不動産を法定相続分で登記し差し押さえます。
 
息子の借金から親の財産を守る必要があります。息子以外の相続人に財産を相続させる公正証書遺言を作成しました。
 
母親と3つの約束をしました。親は保証人になっていないので金融業者に絶対払わないこと、息子にはお金を渡さないこと、何かあったらすぐ電話をくれること、とりあえず一安心と思ったら予期せぬことが起こってしまいました。
 
高齢の両親より息子が先に亡くなってしまったのです。住んでいたアパートのポストは複数の金融業者の督促状でいっぱいです。
 
息子は独身なので、相続人は両親になります。息子の借金は親が相続します。金融業者は相続放棄ができる3ヶ月以内は請求してきません。司法書士をコーディネートして家庭裁判所へ両親の相続放棄を申し述べました。親の放棄が確定すると相続順位が変わり、兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹に相続放棄させ、息子の借金から親の財産を守ることができました。
 
正の財産の相続は支援してくれる専門家はたくさんいます。だが、借金や保証債務など、この影の部分(負)の相続は専門家の支援がありません。泣き寝入りを余儀なくされている人もいます。
 
親の借金から子どもの人生を守る。子どもの借金から親の財産を守る。置き去りになりがちですが相続での重要なテーマです。