カテゴリー : 野口レポート

今回の税制改正で最も注目されたのは相続税基礎控除の改正です。それに隠れ騒がれていませんが地主さんに怖い改正がありました。

相続税取得費加算の改正です。相続開始後3年10か月以内に相続で取得した土地を売った時の譲渡所得に大きく影響してきます。

3,000万円で買った土地が値上りし、10年後に5,000万円で売れました。差額の2,000万円が土地を売ったことで得る利益(キャピタル・ゲイン)で、譲渡所得となります。

この2,000万円に対し、20%(5年超所有)の税金が課税されます。この利益は土地を売るまでは表に出ません。帳簿上の価格は3,000万円のままです。だが、実際には2,000万円の利益を含んでいます。これを含み益と言います。

この逆で、5,000万円で買った土地が値下がりし、3,000万円になりました。2,000万円の損失(キャピタル・ロス)です。この土地の帳簿価格は5,000万円ですが、2,000万円の損失を含んでいます。これを含み損と言います。

ご先祖様から代々引き継いできた土地は取得した価格などわかりません。取得費(取得した時の価格)が不明な土地は、売った価格の5%を取得費とみなすとの税法上の決まりがあります。

そのむかし、3,000万円で買った土地が5,000万円で売れました。だが、売買契約書や関係書類が見当たりません。整合性がとれなければ取得費不明となる可能性があります。取得費は5,000万円の5%とみなされ250万円となります。4,750万円もの利益(譲渡費用は控除)が出てしまいます。

昨年までは、相続で取得した土地を相続開始後3年10か月以内に売却した場合、売却相続人が相続で取得した「全ての土地に課せられた相続税」を取得費に加えることができ、譲渡利益を大きく減らすことができました。これが相続税取得費加算の特例です。

ここに改正が入りました。取得費に加えることのできる金額は相続で取得した「売却した土地に課せられた相続税」だけしかできなくなりました。譲渡利益が増えるので手取りが減り、今まで以上に土地を売らなければ相続税が払えなくなります。

相続税は10か月以内に現金一括払いが原則です。物納も先の改正で難しくなりました。億単位の延納も途中で行き詰まります。

大手の不動産会社が「相続税は立替てあげますよ。返済は土地が売れてからでいいですよ。」新なビジネスを展開してきました。相続開始後では中小不動産業者は勝負になりません。

今回の改正で相続後の土地売却に以前ほど優位性はなくなりました。生前の土地売却も視野に入れながら、相続税納税対策を検討する余地が出てきました。状況を的確につかみ、お客様に適切なアドバイスができれば、中小不動産業者にも勝機が出てきます。