カテゴリー : 野口レポート

相続対策には、遺産分割対策、相続税納税対策、相続税節税対策などがあります。が、この対策が同じ方向を向くとは限りません。

舞台(相続)にかぶりついてしまったら、役者の顔(財産・法律・税金)は見えても、芝居の流れ(人生・幸せ)が見えません。離れすぎたら流れは見えても、顔が見えません。「顔も見える、流れも見える」ほどよい席に座ると、優先すべき相続対策が見えてきます。

節税対策を優先し、多額の借金で賃貸マンションを建てました。相続税は減ったが納税資金が工面できない、これでは本末転倒です。納税対策を優先し更地の駐車場にしておけば、売却し相続税は十分払え、残りのお金は遺産分割の原資になったはずです。地主さんは

1に納税対策、2に遺産分割対策で、節税対策など最後の最後です。

3億円の借金をして3億円の賃貸マンションを建てました。借金の評価は3億円です。対し賃貸建物の評価は約1,5億円に半減します。節税効果は借金ではなく、この差違に生じるのです。

ここに改正が入りました。令和9年1月1日以後に、親がこの対策を施し5年以内に亡くなったら、賃貸建物は通常の取引価格を基準とした評価方法が適用され、建築費と物件の差違が減り、相続税を減らす節税効果は激減してしまいます。

バブル期の話です。「相続対策になりますよ」と、営業マン。「いくらでもお貸ししますよ」と、銀行マン。「このままでは土地を失いますよ」と、建築系や銀行系の税理士先生。

そしてバブル崩壊、価値が下る不動産、価値が下がらない借金、後に残ったのは資産価値が激減した不動産と膨大な借金です。

いったい「あの営業マン、あの銀行マン、あの先生は何だったんだ!」だが、この人達を恨んではいけません。最後に決めたのは自分です。これが自己責任というものです。

地主さんは国に隠れた借金をしています。この膨大な借金は親が亡くなると突然表に出できます。10か月以内に返せと、取立人は容赦なくやってきます。何とか返済し、年忌法要も済ませホッとするのも束の間、気がつけば自分の相続が忍び寄ってきています。

ご先祖様や親から預かってきた財産は相続人に伝えていくべき大切な財産には違いありません。しかし、その財産や相続税に自分や相続人の人生が振り回されてしまったら意味がありません。一番大切なのは財産を持っている人や相続人の人生そのものです。

「得るは捨つるにあり」と申します。今の相続税制度である限り、無傷で財産を守ろうとしても無理があります。ならば、財産を相続税から守ろうとして悩み苦しむより、相続税を取られても残った財産に感謝し、自分の人生観や価値観にもとづき、心にゆとりある人生を楽しみ、その相(すがた)を次の世代に伝えていく、こうした考え方がこれからの相続の姿ではないかと思う次第です。