カテゴリー : 野口レポート

20年ほど前の話になります。大手都市銀行が「個人向けローン」に参入し、テレビコマーシャルが盛んでした。担保や保証人は不要だし銀行だから安心と、安易な気持ちで借りてしまいます。

「保証会社(大手の消費者金融)が保証している」この意味など知るよしもありません。もし返済できなくなってしまったら、銀行に代位弁済した消費者金融のプロが回収にやってきます。

 《例》当時、ある母親から相談を受けました。50代独身の息子(Aさん)が多重債務に陥り、マチ金業者の対応やAさんへのお金の工面で疲れ切っています。内藤 雄さん(借金相続専門家)、田中康雅さん(相続特化司法書士)と組み対応しました。

 マチ金業者は息子に返済能力がないのは承知です。高齢の両親の相続をあてにして、お金を貸し込んでいます。子の借金から親の財産を守る必要があります。多重債務者のAさん以外の子に親の財産を相続させる公正証書遺言を作成しました。

とりあえずひと安心と思ったら、予期せぬことが起こってしまいました。親より先にAさんが亡くなってしまったのです。

Aさんの相続人は両親になり、このままでは借金は親が相続します。親が相続放棄すると、次は第3相続順位の兄弟姉妹が借金を相続することになります。高齢の両親と兄弟は不安でなりません。

幸いに家族は保証人になっていません。田中さんに相続放棄の手続きをお願いしました。田中さんは多くを語らず、「大丈夫です!」と一言不安を抱えている相談者や相続人にとって、こんなに心強い言葉はありません。

家庭裁判所に申し述べ相続放棄が確定したら、親は最初から相続人ではなくなります。次の相続順位である兄弟姉妹全てを相続放棄させ、「子の借金から親の財産を守る」ことができました。

相続にはこの逆もあります。「親の借金から子の人生を守る」対策です。バブル期に相続税を減らそうと、借金コンクリートのマンションを数棟建てました。やがてバブル崩壊、価値が激減する不動産、価値が減らない借金、気がつけば借金が資産を上回る債務超過、節税対策で資産家が悲惨家へ、本末転倒の悲劇も生まれました。

◎提案してくれた先生⇒こんなはずではなかった。◎建てた建築会社⇒すでに倒産。◎貸し込んだ銀行の支店長⇒転勤でどこにいるか分からない。皆、知らぬ顔です。が、この人達を恨んでもしかたありません。節税対策は自己責任、最後に決めたのは自分です。

親の借金から子の人生を守るためには相続放棄(子が保証人になっていないことが絶対条件)もやむを得ません。

ちなみに「財産はいらないよ」と、遺産分割協議書にハンコを押すのは、民法上の相続放棄ではありません。ゼロの財産を相続した(単純承認)ことになり、借金や保証債務があったなら、原則として法定相続分の割合で相続してしまうので注意してください。