カテゴリー : 野口レポート

測量士や土地家屋調査士による測量には、建物建築時などに現状を測る「現況測量」と、現状を測り隣接地主が互いに境界を確認し、境界確認書を取り交わす「確定測量」があります。

調査士は測量の他に土地の合筆や分筆、建物表示登記など、業務の幅が広く、相続では調査士をパートナーにします。国家資格の士業なのに、なぜか先生でなく測量屋さんと呼ばれ親しまれています。

測量機器も進化しており、測るだけなら難しい話ではありません。調査士は、周りの隣接地主から、境界確認書、越境物解消や私道の通行や掘削などの覚書に判子をもらう重要な役目を負います。

《例》以前手がけた地主Aさんの相続です。遺産のなかに660㎡ほどの無道路地があります。売却するには隣接地主の土地の一部と等価交換するか、一部を買い取って接道を満たすしかありません。

この交渉に隣接地主のところへ行きました。が、この地主さんは以前に境界問題で、Aさんから判子を押してもらえず、辛い思いをさせられたそうです。何度訪問しても良い返事がもらえません。交渉中にご本人が急逝してしまい、奥様との交渉になりました。

奥様からは、「お父さんの怨みは私が相続します」と言われ、人間の怨念の深さを、思い知らされたことがありました。境界トラブルは自分のやったことが、そのまま自分に還ってきます。

相続税は10ヵ月以内に現金一括払いが大原則です。特例で物納もありますが、使い勝手が悪く実務にはなじみません。地主の相続では、適切な土地評価、速やかな相続税申告、円滑な納税サポートができる税理士が要になります。そして確定測量に特化した調査士が必要です。境界が確定できなければ土地は売れず、相続税の現金一括納付ができません。調査士の存在は税理士に次いで重要です。

〇隣接地主が相続争いをしている。〇隣接地に管理組合のないマンションがあり、地主が数十人もいる。〇隣接地主は法人で会社が倒産してしまっている。〇隣接地主が認知症を発症している。いずれも境界確定が困難です。

《例》売買契約も無事締結し、確定測量が終われば残金決済をするのみとなりました。これで相続税の現金一括納付できます。安心したのも束の間でした。何を思ったか隣接地主が50年前の遺恨を持ち出し、最後の土壇場で理不尽な主張をしてきました。

難くせをつけ判子を押してくれません。大苦戦を強いられ胃が痛くなりました。境界が確定しなければ面積も確定しません。

結局は売買契約を解約せざるを得ませんでした。地主相続における境界確定測量は遺産分割に次いで気を遣う分野です。

境界線は、感情線とも勘定線とも言われています。境界確定測量は相続と同じく、人の心と欲が複雑に絡んでくるからやっかいです。相続税の調達に必要な売却予定地は、生前測量など事前の準備で「杭を残して悔いを残さない」ことが大切です。