カテゴリー : 野口レポート

役員を務めていた相続アドバイザー協議会本部と、活動の拠点は高田馬場にありました。山手線のホームに降りると、鉄碗アトムのテーマ曲が発車メロディーとなって流れてきます。

未来都市をバックに飛び立っていく、鉄腕アトムは永遠のヒーローです。手塚治虫さんの作品にはロマンがあります。少年達は競って手塚治虫さんの漫画を読み空想の世界に浸りました。

そのなかに人間がロボットに征服されてしまう話がありました。今でも強く印象に残っています。人間がロボットに征服される!?

馬鹿なと、お思いでしょうが、人間はロボット(人工知能)に征服されようとしています。

どこを見ても老若男女が一心不乱でスマホに夢中です。電車内の光景は異様な感じさえします。スマホを使っているつもりが、実は使われてしまっているのです。

場所さえ打ち込めばナビがどこへでも連れて行ってくれます。どんな難しい漢字でも瞬時に転換してくれます。AI機能が搭載されたスマホも出てきました。人間の判断力や思考力、勘や頭は使う必要がなくなってきます。今やAIが多くを補ってくれています。目の前のコンビニでもロボットが掃除をしています。いつの日かAIが多くの職業に取って変わる日がくるかもしれません。 

「故人AI」なるものも出てきました。AIで故人を再生するそうです。が、故人と対話ができれば、リアルな表情や声にひたり続け、いつまでも悲しみを断ち切れなくなるかもしれません。

AIやITが進化するほど、頼るほどに人間の脳は退化していきます。このままでは、人間はロボット(人工知能)に征服されてしまいます。今から60年も前、このことをすでに察し、漫画を通し警鐘を鳴らしていた手塚治虫さんの鋭い洞察力には驚きます。

すでに20年ほど前には携帯電話やパソコンで、メールを長時間使っている人に認知症に似た症状が出ていることがわかり、「メール脳」として指摘されていました。

スマホは当たり前の時代です。スマホ依存による脳の過労が原因でアルツハイマーと類似した症状が出ることが分かっています。スマホ認知症外来が開設された病院も出てきました。

高齢者の認知症は増え続けています。そこへ年齢を問わないスマホ認知症や、双方の予備軍が加われば末が心配になります。

AIやITの進化で世の中は、はるかに便利になりました。だが、人間は便利の代償として大切なものを失っている気がします。

ハガキ道の坂田道信氏、トイレ掃除の鍵山秀三郎氏、お二人はすでに故人ですが、生前あえて不便を選んでおられました。

人間が作ったものに、人間が使われてしまう。AIの落とし穴です。この落とし穴にはまらないためにも、原点に戻り、時には意識して不便を選んでみることも必要ではないでしょうか。