カテゴリー : 野口レポート

10数年ほど前に手がけた相続案件がありました。相続人は5人です。独身の姉(長女)がすべてを仕切っています。姉の依頼を受け、妹さん(二女)のところへ行きました。姉と妹との間には深い確執があり、ここを合意に導けるかが勝負となりました。

妹さんにすれば私は敵(姉)の手先です。最初は玄関にも入れてくれません。数回通っているうちに真心と公平な対応が通じ、最後は心を開いてくれました。相続手続きも無事終わり、今度は逆に全幅の信頼を受けてしまい、何かあると私に相談してくれます。

それから8年後に姉は亡くなりました。最近、妹さんから電話もなく心配していました。大病を患い手術を受けたと後で知りました。幸い手術は成功したとのことです。

その後、野口さんには話しておきたいと、妹さんから分厚い手紙を頂きました。幼い頃からの辛い思いや、姉との確執もビッシリ書いてありました。私はその手紙を読んで、このままにしておいてはいけないと、次のような返事を書きました。以下略文

「このようなお手紙を私にくださるには勇気がいったことと思います。子供の頃から色々なことがありましたね。人を恨まなければならない環境にあったことはよく分かりました。だが、人を恨むことは、ものすごいエネルギーを消耗します。

亡くなったお姉さんを許してあげたらどうでしょうか、今まで辛い思いをされたことは十分承知です。人を恨みながら死んでしまったら、その遺恨は来世までのこり自分に還ってきます。

恨みはどこかで断ち切らねばエンドレスとなり続きます。そうは言っても、気持ちは簡単に切りかえられないかも知れません。

だが、お姉さんを許してあげてください。仏壇に手を合わせ、嘘でもいいからお姉さんを許すと言ってください。毎日続けていると本当に許せる気持ちになります。

人に言えないご苦労、言葉で表せない辛さはお察しします。大病を乗り越えたことは、このまま恨みを残して死んではいけないと、天が時間を与えくださったのです。

勝手なことを書いてしまいました。お許しください。だが、このままではご自身が不幸で終わってしまいます。原因はすべて自分の心のなかにあると思ってください。 野口賢次 拝」

妹さんは涙をボロボロ出しながら、この手紙を読んでくれたそうです。「そんな気持ちになれるものか」と思いながらも、仏壇に手を合わせ、お姉さんを許すと言ってくれたそうです。

しばらくし、妹さんからお礼を言われました。「物心がついてから60年、一時も頭から離れなかったシコリが取れ、気持ちが楽になりました。今が一番幸せな気がします。」うれしい言葉でした。

10数年前に完了したと思っていた相続案件でしたが、本当の意味で終わったことを感じました。