カテゴリー : 野口レポート

遺言には大きく分けると、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は、家庭裁判所の「検認」を受け、遺言に「検認証明書」を添付しなければ、銀行預金の解約や不動産などの相続手続が一切できません。

検認は遺言が有効か無効かを判断するものではなく証拠保全作業です。相続人全員が家庭裁判所の審判廷に呼ばれ(出欠は自由)相続人の前で開封されます。

公正証書遺言は、法律の専門家が作成するので法的不備はありません。原本は遺言者が115才位になるまで公証役場で保管してくれます。ゆえに改ざん、紛失、焼失の心配はありません。

公正証書遺言には、「検索制度」があります。平成元年以後に作成した遺言なら、相続開始後に相続人もしくは代理人が近くの公証役場へ出向き検索をかければ、全国どこの公証役場で作成した遺言でも一覧表で出できます。相続人が請求すれば再発行も可能です。

◎Aさん家族は某団体に属しています。Aさんはこの団体に馴染まず、成人したのを機に脱会しました。それが原因で家族からは村八分にされています。いつもながらこの種の問題の根の深さを感じずにはいられません。弟がすべてを仕切り、何をするにもAさんは蚊帳の外です。そんな仕打ちに耐えてきました。

 父親が亡くなりました。弟に何度連絡しても取りあってくれません。遺産を把握するため不動産登記簿謄本を取りました。収益物件はすでに相続開始後に弟の名前で登記がされていました。Aさんは遺産分割協議書に判子を押した覚えはありません。

公正証書遺言があれば登記が可能です。検索をかけてみました。平成19年作成が1本、亡くなる5年前に作成したものが1本ありました。遺言が複数ある場合は日付の新しいものが有効です。

内容はひどいものでした。弟が収益不動産や預貯金など美味しいところを独り占めし、羽振りのよかった父親が、当時買いあさったリゾートの土地(複数)を全部Aさんに押しつけています。

これらの土地は流通するような物件ではありません。周りの土地も多くが売りに出ています。が、成約した物件は1件もありません。これは「資産」ではなく「負債」です。俗に言う「負動産」です。

弟はいいとこ取りを決め込んで、何をしても何を言っても音沙汰なし、相続税の申告もできません。このような相続人は一番始末が悪いです。ここは弁護士にお願いすることにしました。

この案件の懸念は、子のいないAさんが亡くなり、次に奥様が亡くなったら、多くの「負動産」が奥様の兄弟姉妹や甥姪に渡ってしまう可能性があります。これをどうするか、これからの課題です。

Aさんはセミナーで私の話を聴いて感銘してくれました。それがご縁で知りあいました。素朴で素直な人です。できることはやってあげたい、そんな気持ちで取り組んでいます。