疎遠の相続人には3通りのタイプがあります。①亡くなった人とは面識もなく「遺産を頂く筋合いはないから」と相続分の放棄を申し出てくれる人。②代表相続人の提案をほぼ受け入れてくれる人。③権利意識が強く「自分も相続人である」と権利を主張する人。
遺産分割は全員が納得し、すんなり合意することなどめったにありません。何度かキャッチボールをして落としどころを探っていきます。苦労しましたが最後は何とかまとまりました。
遺産分割協議書は原本(全財産が記載)が人数分と、不動産登記用(不動産のみ記載)が1通、銀行用(預貯金のみ記載)が1通、全部で3種類作成します。
原本で相続登記をしてしまうと法務局に写しが残り、利害関係人は閲覧できてしまいます。
原本で銀行手続きをすると、その家の全財産を銀行にさらけ出すことになります。遺産分割協議書の原本はトップシークレットです。
不動産登記用の分割協議書は、相続登記ができるか、調印の前に事前に司法書士にチェックをお願いします。
銀行の預貯金の解約手続き等を円滑に行うため、Bさんが預貯金と全財産を1人で取得し、協議で決まった金額を他の相続人に代償金として支払う代償分割の形を取りました。
Bさん親子に上京いただき、いよいよ預貯金の相続手続きです。手続きに2時間以上かかることもあります。全部で7カ所を回ります。金融機関の相続手続きは肉体労働のようなものです。
必要な書類は私が一切揃えます。Bさんには銀行専用の依頼書に行員の指示にしたがって記入し、署名捺印をしてもらうだけです。私は隣に座って必要に応じてサポートします。
各銀行の手続きも円滑に進み、次は鬼門である某信金です。遺産分割協議書があるので、専用の依頼書は代表相続人1人の署名捺印で足ります。が、相続人全員の署名捺印をもらってくれと言われました。今度ばかりは譲れません。本部に聞いてくれと食い下がりました。本部の答えはそれでよしでした。
預貯金の解約も終わり、Bさん親子に再度上京いただき、最後は相続税の申告です。税理士と打ち合わせをし、あとは郵送と電話でやりとりしてもらい無事に相続税申告も終わりました。
他の相続人は何もしないで、ただ上からお金(代償金)が下りてくるのを待っているだけです。Aさんに子供や養子がいたなら、急逝しないで長寿を全うしたなら、もらえるお金ではありません。
まして疎遠の相続人には棚ボタ財産です。お一人様のAさんは兄弟姉妹に迷惑をかけたくないと、贅沢をせず質素な生活を続け老後に備えてきました。残された遺産は重いお金です。Aさんと動いてくれたBさん親子に感謝し、大切に使っていただきたいものです。