カテゴリー : 野口レポート

芝居やドラマでも主役がいれば必ず脇役がいます。スポットライトを浴びる主役に対し脇役は陰にかくれ目立ちません。
相続税の基礎控除が改正され、平成27年1月1日以降の相続から適用となります。相続人は母(配偶者)と子が2人とします。今まで8,000万円だった基礎控除が4,800万円に引き下げられます。基礎控除を超えた財産は相続税課税の対象となります。
上記の家族構成で私の住んでいる武蔵小杉駅徒歩20分圏内を例にとってみましょう。財産は自宅敷地35坪、預貯金3,000万円、生命保険2,000万円(みなし相続財産500万円)とします。改正前は楽々セーフ(課税なし)でした。
改正後は相続税が約130万円課税されます。しかし、自宅の敷地を配偶者もしくは同居の子が相続すれば、申告することによって小規模宅地の特例が使え相続税は課税なしです。
もし改正前の非課税層(相続人3人)に課税された場合、特例不可の場合でも相続税は100万円~300万円位です。庶民には大金ですが払えないお金ではありません。相続対策の名のもとに不要な借金をしてまでも、賃貸併用住宅やアパートを建てる必要があるのかどうか、ここは冷静に判断する必要があります。

この相続税基礎控除改正の陰にかくれ目立たない改正がありました。相続税取得費加算の改正です。
その昔、2,000万円で買った土地があります。現在は値上がりし1億円で売れます。単純に考えてみましょう、この土地を売ると1億円(売値)-2,000万円(買った価格)となり、8,000万円の差が生じます。この差額が土地を売った時の利益となります。
8,000万円の利益に対し、5年以上所有していた土地であれば税金が1,600万円(利益に対し20%)課税されます。
ご先祖様代々の土地や、買った価格が不明の土地は売値の5%を買った価格とみなされ、大きな利益が出てしまいます。
相続開始後3年10か月以内に相続土地を売る場合(目的問わず)、売り主が相続した全ての土地に課せられた相続税を、買った価格に加えることができ利益を減らせます。これが相続税取得費加算です。
ところが、ここに改正が入りました。平成27年1月1日以降の相続から、取得価格に加えることのできる相続税は、売る土地に課せられた相続税のみとなります。
地主さんの財産構成は土地が占める割合が圧倒的です。相続税は10か月以内に現金一括払いが原則です。物納も平成18年の大改正で難しくなりました。億単位の延納も途中で行き詰まります。
地主さんが相続税を現金一括納付するためには土地を売るしかありません。相続税基礎控除の改正にかくれていますが、相続税取得費加算の改正は地主相続に大きな影響を与えます。