カテゴリー : 野口レポート

正月15日を「上元」、10月15日を「下元」、そのあいだにある7月15日を「中元」と言い、古く中国では大事な祭日でした。
品物に託し感謝の気持ちを伝える中元歳暮、「いつもお世話になります。ほんのおしるしです。」「ご丁寧にありがとうございます。」盆暮れにはどこでも見かける普通のやりとりです。
「ほんのおしるしです。」は、あげるとの意思表示です。対し、「ありがとうございます。」は、もらうとの意思表示です。
書面こそ交わしませんが、「あげる」と「もらう」この意思が合致し、立派に贈与契約の成立です。ちなみに「あげる」だけの一方通行では贈与契約は成立しません。
贈与する品物や金銭が1人に対し年間110万円までなら何人に贈与しても贈与税の課税はありません。これを暦年贈与と言います。
これに対し、相続時精算贈与があります。1月1日現在65歳以上の親から、同日20歳以上の子に対しての贈与です。2500万円までは贈与税の課税はありません。
ただし、親の相続時には贈与を受けた時の評価で遺産の中に戻し、相続税を計算し精算しなければなりません。また、一度この相続時精算贈与を受けた子には、暦年贈与は生涯使えなくなります。

Aさんは30代後半で働き盛りの営業マンです。家族は奥様と子供が2人です。子供は保育所に預け共稼ぎ、平均的なサラリーマン家庭です。持ち家は無く賃貸マンションに住んでいます。
近くに分譲マンションができました。周辺にある賃貸マンションは、デベロッパーには絶好のターゲットです。ポストのなかは物件のチラシでいっぱいです。
「月々の返済は金〇〇〇〇〇円です。」これが殺し文句です。家賃と変わらない月々の返済額に心が揺れます。だが、毎月支払う管理費・修繕積立金などはこのなかには入っていません。
マイホーム取得は誰もが夢です。しかし、Aさんの収入では返済に無理が生じます。息子の話を聞いた父親が住宅取得資金の援助(贈与)をしてくれました。Aさんは心のなかで手を合わせました。
贈与と相続には決定的な違いがあるのをご存じですか? 贈与は親が生きているうちに直接いただく財産です。
Aさんのようにマイホームを取得したい人。住宅ローンが家計を圧迫している人。子供の教育にお金がかかる人。こんな時、親からの贈与は誰もが心から感謝して受け取るはずです。
ところが、相続での親の財産は遺産となります。子に受け取る権利が生じます。つい自分のものだと勘違いしてしまいます。もらうのは当たり前だと思ってしまいます。しかし、贈与も相続も親の大切な財産に変わりありません。例え少なくとも贈与の気持ちで感謝し、遺産を受け取ることが大切です。