カテゴリー : 野口レポート

生命保険受取金は契約形態により、税法上での扱いが異なります。大きく分けて次の3パターンがあります。契約者が保険料を払っていることが前提です。被保険者とは亡くなった人のことです。

《パターン1》 契約者(父) 被保険者(父) 受取人(子・母)、ここでお金の流れを見てみましょう。お金は保険会社から支払われます。が、保険料を払ったのは父です。亡くなった父から子や母が受け取ったことになるので「相続税」の課税です。

受け取った保険金は、500万円×法定相続人の数=非課税となります。非課税の枠を超えた保険金は相続財産に取り込まれ課税の対象となります。この受取金は民法上の相続財産になりません。よって遺産分割は不要です。指定された受取人が取得できます。相続放棄した相続人でも受け取ることができます。

《パターン2》 契約者(子) 被保険者(父) 受取人(子)、子が保険料を払い、自分が受け取るので「所得税」の課税です。

一時所得の1/2に課税です。お金持ちの納税対策に使われます。

《パターン3》 契約者(母) 被保険者(父) 受取人(子)、

保険料は母が払っています。存命している母からお金を受け取ったことになるので「贈与税」の課税です。いちばん悪い契約パターンです。専門家と相談し契約の変更を検討してください。

ある母親が亡くなりました。父親はすでに他界しており、相続人は兄と妹の2人です。母親には生前に某銀行に2000万円の普通預金がありました。取引先の銀行マンにすすめられ、パターン1の契約で、500万円の一時払いの生命保険(受取人兄)に加入しました。これを年間1回、4年繰り返し、2000万円の普通預金が、2000万円の生命保険に入れ替わりました。

高齢の母親には何の意図もありません。昔から知っていた銀行マンの成績稼ぎのために言われるままです。この生命保険がどういう保険なのか受取人の兄に説明しました。

ここからが私のアドバイスです。「法律ではこの受取金は民法上の相続財産にはなりません。指定されている兄が受け取れます。しかし、4年前までは銀行預金です。本来は兄が1000万円、妹が1000万円を相続することができたはずです。ここは法律でなく常識で考えてみましょう。」このまま2000万円を外し、遺産分割したら妹は納得しないでしょう、兄には一歩譲り1000万円を代償金として妹に払うことをアドバイスしました。兄は素直に聞き入れてくれ、妹も納得し遺産分割協議は1回で完了しました。

また、パターン1の契約は、自宅と預金少々の庶民には、預金を生命保険に置き換えることで相続財産を減らし(遺留分も減る)、受取金で遺留分侵害額請求への対応もできる遺留分対策も可能です。

生命保険はその性質を理解し、上手に活用したらシンプルで安全な相続対策として効力を生じます。