一定の相続人は、遺言によっても贈与によっても奪われることのない最低限の相続分を持っています。これを遺留分と言います。
◎平成30年の相続法改正で遺留分減殺請求権が遺留分侵害額請求権に変わり「金銭債権」となりました。
◎配偶者が相続人の場合⇒ 法定相続分の1/2が遺留分となります。
◎子が相続人の場合⇒ 法定相続分の1/2が遺留分となります。
◎直系尊属(父母等)のみが相続人の場合⇒ 1/3が遺留分となります。
◎ちなみに第3相続順位の相続では、相続人である兄弟姉妹に遺留分の権利はありません。遺言があったらその通りです。
◎遺留分を侵害している遺言も無効にならず有効です。
◎遺留分は遺留分侵害額請求をして初めて効力が生じます。侵害額請求されなかった遺産は遺言で財産を取得する受遺者に帰属します。
◎遺留分の権利は侵害されていることを知った時から1年、知らなくても相続開始10年が経過すれば時効により消滅します。
◎相続放棄は生前にはできませんが、遺留分放棄は家庭裁判所が認めてくれたなら生前放棄が可能です。
もし父親に愛人ができ、「全財産を遺贈する」こんな遺言を作られてしまったら、あとに残された家族は路頭に迷います。相続人全員が遺留分を主張すれば遺産の半分は取り戻せます。そんな時は「遺留分侵害額請求権」この法律が光り輝くことでしょう。
こんなアドバイスも時には必要です。
◎相手に減殺請求をさせないで兄弟姉妹の縁を切らせなかった話です。
相続人は、長女、長男、二男です。母親はすでに他界し、長男夫婦が寝たきりの父親を在宅介護していました。夜中でも不具合があると2階にいる夫婦のブザーが鳴り、1階に下りて父親の世話をしなければなりません。長男夫婦は肉体的に精神的に限界にきています。
父親は「全財産を長男に相続させる」との公正証書遺言を残して亡くなりました。主な遺産は自宅の土地建物です。
長男は相続手続きの準備に入りました。弟は、兄貴と義姉さんが親父の介護をし、看取ってくれたのだからと、遺言に理解を示してくれました。姉は、私にも権利があると遺留分を主張してきました。
遺言を執行したら遺留分減殺請求をしてくるでしょう。遺留分減殺請求は弁護士から内容証明できます。内容証明は宣戦布告のようなものです。長男に届いた瞬間に姉弟の縁は切れてしまいす。
相続で一度切れた縁は戻りません。相続実務で一番気に留めていることは兄弟姉妹の縁を切らせないことです。
長男には遺言を使わないで、遺産分割の話し合いで自宅を相続することをアドバイスしました。長男が譲ったので姉も一歩引いてくれました。
姉にハンコ代相当の代償金を払い、長男が自宅を相続することで遺産分割は成立し、姉弟の縁は切れずにすみました。
◎減殺請求権が侵害額請求権(金銭債権)に変わったことで、今後は遺留分を考慮した遺言の作成や、生命保険などを活用し金銭債権に対応できる資金の確保など一定の配慮が必要となります。
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