古い話で恐縮ですが、我が国での衛星による最初のテレビ中継は、1963年に行われたアメリカからの放送です。この歴史的瞬間を見ようと、多くの人がテレビの前(私もその一人)で待ちました。
飛び込んできたのは、ケネディ大統領が暗殺された衝撃的ニュースでした。その後ケネディ家は、暗殺、墜落事故、自殺、離婚など、多くの悲劇に見舞われます。
ケネディ家の父親は、実業家として巨額の富を残しました。子ども達はその財産で、政界や財界に進出し頂点まで登りつめました。だが、幸せにはなれませんでした。
「掃除の神様」の異名で知られ、掃除を国内だけでなく、世界にも広げた鍵山秀三郎氏が、去る1月2日に91歳でお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
イエローハットの創設者で「日本を美しくする会」を立ち上げた人です。氏や全国「掃除に学ぶ会」を中心に掃除の輪が内外に広がりました。無理に勧誘しなくても、良いものは自然と広がります。
氏は日本の精神文化を持った人です。半世紀以上にわたり徹底し、実践してきたトイレ掃除は、すでに哲学の域に達しています。「凡事徹底」は氏の生き様です。誰にでもできることを誰にもできないくらい、徹底して続けていくと平凡が非凡になります。
また、自転車一台で始めた行商から、多くの苦難を乗り越え、年商600億の会社にまで育てあげました。穏やかな表情からは、そんな苦労は微塵も感じられません。何よりすごいところは、人に幸せを与えながら会社を発展させたことです。俺だけが、うちの会社だけはと、周りを蹴落とし多くの人を不幸にしながら発展してきた企業や人はいずれ消えるでしょう。例え大企業のトップでもここを誤ると、お金では買うことのできない大事なものを失います。
人は大なり小なり財産を残すでしょう。人に幸せを与えながら築いてきた財産か、人を不幸にしながら築いてきた財産か、同じ財産でも天と地の違いです。
相手のことを考えず、我欲で手に入れた財産で人は幸せにはなれません。社会や人に役立ちながら、汗して築いてきた財産に争いがおきた話は聞きません。ご先祖様がどう築いてきたか、自分がどう築いていくか、財産は築かれてきたルーツが大切です。
以前、氏からお父様の相続の話を聞いたことがあります。兄弟が互いに思いやり、争いは何一つなかったそうです。
教育者の森信三先生(故人)が、2025年には日本は再び立ち上り、2050年には世界の列国が認めざるを得ない国になると予言されています。正しい日本の歴史を知ること、忘れかけてしまっている日本の精神文化を取り戻すこと、これらのことができたなら、予言も的中するかもしれません。この目でその日を確かめることはできませんが、25年後の日本が楽しみです。